「睡眠は90分周期だから、6時間か7時間半で起きるとスッキリする」——睡眠の話題で最もよく聞く"知識"のひとつです。90分の倍数で目覚ましを逆算した経験がある人も多いでしょう。
結論から言うと、この説は半分本当で、半分神話です。どこまでが事実で、どこからが誇張なのかを整理します。
本当の部分:眠りには周期がある
眠りが浅い「レム睡眠」と深い「ノンレム睡眠」を交互に繰り返す構造は事実です。そして、浅いレム睡眠のタイミングで目覚めると比較的スッキリ起きられるのも本当です。深いノンレム睡眠の最中に無理やり起こされたときの、あの頭が働かない感じ(睡眠慣性)は誰もが経験しています。
問題は、この周期を「90分」という固定値で扱えるか、です。
神話の部分:「90分」は平均値にすぎない
実際の睡眠周期は70〜110分の幅があり、個人差が大きいことが知られています。さらに厄介なことに、同じ人でも周期は一定ではありません。眠りはじめは深いノンレム睡眠が長く、明け方に近づくほどレム睡眠の割合が増える——つまり一晩の中でも周期の中身が変わっていきます。
周期が80分の人が「90分×5=7時間半」で目覚ましをかければ、5周期分で50分のズレが生まれます。90分逆算は、平均値を自分に当てはめた「他人のサイズの靴」のようなもので、合う人もいれば合わない人もいる、というのが実態です。
逆算アラームより効く3つのこと
① 起床時刻を毎日そろえる
スッキリ起きたいなら、周期の逆算より起床時刻の固定のほうがはるかに強力です。毎日同じ時刻に起きて朝の光を浴びると、体内時計が起床に向けて体温やホルモンを準備するようになり、「目覚ましの少し前に自然に目が覚める」状態に近づきます。体が周期を起床時刻に合わせにいってくれる、と言ってもいい。
② 睡眠時間を削る言い訳にしない
90分神話の一番の害は、「6時間で起きれば7時間より調子がいい」という短時間睡眠の正当化に使われることです。周期の切れ目で起きても、総睡眠時間が足りなければ睡眠不足は睡眠不足。切れ目のスッキリ感は、量の不足を帳消しにはしません。
③ 自分の周期を知りたいならデータで
それでも自分の周期に興味があるなら、逆算表ではなくスマートリング等のトラッカーで2週間ほど傾向を見るほうが実用的です。「何時に寝て何時に起きた日が調子いいか」という自分のデータは、万人向けの90分ルールより確実にあなたに合っています。
目覚めの悪さは「周期」以外が原因のことも多い
朝スッキリ起きられない原因は、周期のタイミングより手前にあることがほとんどです。就寝時刻が毎日ずれている、寝る直前までスマホを見ている、週末に寝だめして時計が狂っている——。自分の目覚めを壊している行動がどれかは、傾向から特定できます。