秋から冬にかけてのだるさは、気持ちの問題である前に浴びられる光の量が物理的に減っているという話です。
- 東京の日の出は9月1日の5時13分から、冬至には6時46分へ。1時間33分遅くなります
- 昼の長さは12時間56分から9時間45分へ、3時間11分短くなります
- 体内時計は24時間より少し長く、朝の光でしか前に戻せません。その朝の光が来る時刻が毎日遅れていきます
- おまけに、日の入りが最も早いのは冬至ではなく12月上旬。夕方の暗さのピークは冬至より3週間早く来ます
9月の後半に入ると、帰り道が急に暗くなったと感じます。朝も、目覚ましが鳴った時点でまだ部屋が薄暗い日が出てきます。そして、なんとなく起きられない・日中も眠い、という状態が続きます。
この感覚には、はっきりした数字の裏づけがあります。国立天文台が公開している日の出・日の入りのデータを東京で並べると、いま何が起きているのかが一目でわかります。
数字で見る — 9月から冬至までに起きること
国立天文台 暦計算室の「日の出入り」から、東京(北緯35.6581度・東経139.7414度)の2026年の値を抜き出しました。
| 日付 | 日の出 | 日の入り | 昼の長さ |
|---|---|---|---|
| 9月1日 | 5:13 | 18:09 | 12時間56分 |
| 10月1日 | 5:35 | 17:26 | 11時間51分 |
| 11月1日 | 6:02 | 16:46 | 10時間44分 |
| 12月1日 | 6:32 | 16:28 | 9時間56分 |
| 12月21日(冬至) | 6:46 | 16:31 | 9時間45分 |
3か月と少しで、朝の光が来る時刻が1時間33分うしろにずれます。夕方に光が消える時刻は1時間38分前に来ます。合わせて、明るい時間が1日あたり3時間11分削られます。
9月は「暗くなるのが最も速く早まる」月
秋の入り口でだるさを感じやすいのには理由があります。日の入りが早まるスピードが、1年で最も速いのがこの時期だからです。
東京の日の入りは9月1日の18時09分から、9月30日には17時27分になります。1か月で42分、1日あたり約1分半ずつ早まっている計算です。1週間で10分、2週間で20分。「この前まで明るかったのに」という感覚は正確で、実際に2週間単位でわかるほど動いています。
夏の疲れや寒暖差といった別の要因もこの時期に重なります。そちらは秋バテの記事で扱っているので、心当たりがある人は合わせて読んでみてください。この記事では光だけを取り出して見ていきます。
なぜ光が減ると眠くなるのか
体内時計の側の事情を押さえておきます。厚生労働省のe-ヘルスネットは、こう書いています。
「朝の強い光は体内時計を早める方向に、夜の光はこれを遅らせる方向に働きます」
ここが要点になります。人の体内時計は放っておくと毎日少しずつ後ろにずれます。それを毎朝リセットして24時間に合わせ直しているのが、朝に浴びる光です。
ところが秋冬は、その朝の光が来る時刻が日ごとに遅れていきます。同じ時刻に起きても、9月には浴びられていた光の強さが、11月の同時刻には得られません。リセットの効きが弱くなる期間と言い換えてもいいでしょう。結果として、寝る時刻も起きる時刻も後ろに引っぱられやすくなります。
体内時計がずれること自体の影響は、飛行機に乗らずに起きる時差ぼけ——ソーシャルジェットラグと同じ仕組みで理解できます。
秋冬に起きやすい「悪循環」の形
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」には、この悪循環がそのまま書かれている一節があります。
起きる時刻を遅らせる → 午前の光を逃す → リズムがさらに後ろへ → 朝がもっとつらくなる、という順路です。同ガイドは成人向けの項でも、寝だめのために休日の起床時刻が大きく遅れると「体内時計が混乱し、時差地域への海外旅行と同様の時差ボケが生じる」と書いています。
秋冬は、この輪が回り出しやすい時期です。朝が暗いので起きるのがつらく、つらいので休日に寝坊し、寝坊すると午前の光を逃します。逃すとリズムが後退して、平日の朝がさらに暗く感じられます。休日の寝すぎが効きにくくなるのも、この時期の特徴です。
豆知識 — 日の入りが最も早いのは冬至ではない
「一番暗いのは冬至」と思われがちですが、実際のデータはそうなっていません。
- 日の入りが最も早いのは12月1日〜13日の16時28分。冬至(12月21日)の16時31分より3分早い時刻です
- 日の出が最も遅いのは年が明けた1月上旬の6時51分。冬至の6時46分より5分遅い時刻です
- 冬至はあくまで昼の長さが最短の日であって、朝と夕方それぞれの「暗さのピーク」とは日付がずれています
実務的にはこうなります。夕方の暗さがこたえるのは12月上旬で、冬至を過ぎても楽にはなりません。朝の暗さがこたえるのは年明けで、こちらは1月中旬まで続きます。「冬至さえ越えれば」と思っていると、越えたあとに一番きつい朝が来ます。
だるさが「冬季うつ」に近づくライン
季節による落ち込みが強く出る場合、医学的な名前がついています。厚生労働省の働く人向けサイト「こころの耳」は、季節性うつ病をこう説明しています。
注目したいのは5000ルクス以上という数字です。一般的な室内照明はこれよりずっと暗く、「部屋の電気をつけているから光を浴びている」は成り立ちません。屋外の明るさは曇りの日でも桁が違うので、数分でも外に出るほうが、室内で1時間過ごすより効くという順序になります。
なお、季節性うつ病は冬季だけのものではなく、「冬季のみでなく、夏季や雨季などの季節性うつ病も存在します」とも書かれています。毎年同じ季節に決まって不調が出る場合は、季節性という視点で医師に相談する価値があります。
この時期に効く順番
光が減るのは止められません。動かせるのは「減った光をどう受け取るか」だけです。効く順に並べます。
- 1. 起床時刻を動かさない — 寝る時刻ではなく起きる時刻を固定します。休日も平日との差を小さくします。ガイドが指摘する悪循環の入り口がここにあります
- 2. 起きたらすぐカーテンを開ける — 睡眠ガイド2023も、こども向けの項で「朝起きる時間を決め、カーテンを開けて部屋を明るくしましょう」と具体的に書いています。大人にもそのまま当てはまります
- 3. 午前中に一度外に出る — 通勤・通学がそれに当たる人は、駅までの数分を意識して外を歩きます。在宅勤務の人はこの機会が丸ごと消えるので、意図的に作る必要があります
- 4. 夕方以降は逆に光を足しすぎない — 夜の光は体内時計を遅らせる方向に働きます。暗い季節ほど夜に煌々と照らしがちになるので、就寝前は落とします
順番が大事で、1と2を飛ばして4だけやっても効きません。前に戻す力を持っているのは朝の光だけで、夜の調整はそれを邪魔しないための後処理にすぎません。
まとめ
秋から冬のだるさは、根性の問題として扱うと出口がありません。実際には、朝の光が1時間半うしろへずれ、明るい時間が3時間削られるという、環境側の変化が先にあります。
やることは増えません。起きる時刻を動かさず、起きたら光を入れる。それだけを、光が減る3か月のあいだ手放さないことです。冬至を越えても朝はまだ暗くなるので、ゴールは1月中旬あたりに置いておくと気持ちが折れにくくなります。
よくある質問
秋から眠くなるのは日照時間のせいだけですか?
部屋の照明を明るくすれば代わりになりますか?
一番暗いのは冬至ですか?
冬に寝る時間が長くなるのは異常ですか?
朝が暗くて起きられません。起床時刻を遅らせてもいいですか?
本記事は公的機関の公開データおよび資料の記載を整理したものであり、診断・治療にかかわる医学的助言ではありません。日常生活に支障が出ている場合は医療機関に相談してください。日の出入りの時刻は地域によって異なります。(執筆時点の情報です)