2026年度の全国学力テストで、SNS・動画の視聴時間が長い子ほど正答率が低い傾向がはっきり出ました。中3の約半数が平日3時間以上、両端の差は算数・数学で約21ポイントです。
- 最上位は「持っていない」ではなく「持っているが30分未満」の層
- ICTを使いこなす自信は学力と正の相関。分かれ目は受動か能動か
- 報告書も明記する通り、相関であって因果ではない
2026年4月23日、小学6年生と中学3年生のほぼ全員を対象にした全国学力・学習状況調査が実施されました。参加したのは小6が約93万人、中3が約86万人。8月に公表された報告書には、教科の成績だけでなく、子どもたちの生活を尋ねた「質問調査」の結果が含まれています。
この記事では、その質問調査報告書の中からスマホ・動画・睡眠リズムに関わる部分だけを取り出して、数字の実態と読み方を整理します。
まず実態 — 「4時間以上」が小6で21.7%、中3で28.5%
質問はこうです。「普段(月曜日から金曜日)、1日当たりどれくらいの時間、スマートフォンや携帯電話、パソコン、タブレット、ゲーム機、テレビ等でSNSや動画視聴などをしますか」。学習に使う時間とゲームをする時間は除いた、純粋な「見る時間」の質問です。
| 平日1日あたり | 小学6年生 | 中学3年生 |
|---|---|---|
| 4時間以上 | 21.7% | 28.5% |
| 3時間以上4時間未満 | 15.6% | 20.6% |
| 2時間以上3時間未満 | 19.9% | 25.3% |
| 1時間以上2時間未満 | 20.9% | 17.1% |
| 30分以上1時間未満 | 11.1% | 5.2% |
| 30分未満 | 5.8% | 2.0% |
| スマートフォン等を持っていない | 4.5% | 1.0% |
合計すると、3時間以上の子は小6で37.3%、中3で49.1%。中3では「1日3時間以上、SNSと動画を見る」がもう少数派ではなく、ほぼ半数の標準的な過ごし方になっています。逆に30分未満に収まっている中3は、100人に2人しかいません。
なお、この質問は今回から対象が広がりました。前回までは「携帯電話やスマートフォン」だけを尋ねていたのに対し、今回はパソコン・タブレット・ゲーム機・テレビでの視聴まで含めています。テレビの大画面で見るYouTubeも数字に入ったということで、報告書も過去の数値は参考扱いにしています。過去より跳ね上がって見えるのは、子どもが急変したからではなく、ものさしが実態に追いついたからです。
視聴時間と正答率 — きれいな右肩下がり
この回答を教科の成績と突き合わせたのが次の表です。数字は各層の平均正答率(英語のみIRTスコア)です。
| 平日の視聴時間 | 小6 国語 | 小6 算数 | 中3 国語 | 中3 数学 | 中3 英語(スコア) |
|---|---|---|---|---|---|
| 30分未満 | 70.7% | 68.6% | 71.8% | 69.6% | 548 |
| 30分〜1時間 | 67.5% | 63.7% | 71.4% | 68.9% | 547 |
| 1〜2時間 | 65.2% | 61.0% | 69.5% | 65.9% | 533 |
| 2〜3時間 | 62.0% | 57.3% | 66.6% | 61.0% | 512 |
| 3〜4時間 | 58.1% | 52.7% | 63.2% | 55.5% | 491 |
| 4時間以上 | 52.9% | 47.7% | 58.5% | 48.7% | 463 |
| 持っていない | 64.1% | 60.7% | 63.3% | 57.5% | 504 |
どの教科でも、視聴時間が1段増えるごとに正答率が段階的に下がります。両端を比べると、「30分未満」と「4時間以上」の差は小6算数で20.9ポイント、中3数学でも20.9ポイント。中3英語ではスコアで85点の開きです。相関係数は教科によって−0.20〜−0.26で、90万人規模の調査でこれだけ一貫した傾きが出るのは、偶然では説明がつきません。
ただし報告書自身がはっきり書いている注意点があります。これは相関関係の分析であって、因果関係を示したものではないということです。「動画を見るから成績が下がる」のか、「勉強時間が確保できている子は結果的に視聴も短い」のか、家庭環境という第三の要因が両方を動かしているのか、このデータだけでは区別できません。
いちばん面白いのは「持っていない」の位置
この表でDetoxNewsが注目したいのは、実は両端ではありません。「スマートフォン等を持っていない」層の位置です。
もし「スマホは学力の敵」という単純な図式が正しいなら、端末を持っていない子が最上位に来るはずです。実際にはそうなっていません。持っていない層の正答率は中3数学で57.5%と、「2〜3時間見る」層(61.0%)より下。どの教科でも、だいたい「1〜2時間」層と「3時間」層の間あたりに沈みます。最上位はあくまで「持っているが、30分未満に収まっている」層です。
さらに同じ調査で、逆向きの相関も出ています。「ICT機器で文章を作成できる」「情報を整理してまとめられる」といった活用の自信を尋ねた質問では、自信がある子ほど正答率が高い(相関係数+0.24〜+0.29)。報告書はここから、「受動的に利用するにとどまらず、主体的・能動的に活用できる力を育てることが学力向上に寄与する可能性」を示唆しています。
つまりこのデータが描いているのは「画面=悪」ではなく、同じ端末でも「流れてくるものを見続ける使い方」と「道具として使いこなす使い方」で、学力との関係が正反対になるという構図です。ショート動画型の刺激が集中力に与える影響はスマホと脳の記事やドパガキの解説で書いてきた通りですが、国の90万人調査がその裏付けになる形です。
生活リズムの数字 — 就寝時刻が安定しない子は約2割
同じ質問調査には、睡眠に関わる項目もあります。「毎日、同じくらいの時刻に寝ていますか」に「している」と答えたのは小6で40.5%、中3で34.9%。「どちらかといえば」を含めれば約8割が規則的ですが、裏返せば小6の16.8%、中3の19.3%は就寝時刻が安定していません。
一方で「同じくらいの時刻に起きていますか」は小中とも約9割が規則的です。起床は学校がそろえてくれるが、就寝は各家庭の夜に委ねられている——乱れが出るのはいつも夜側です。朝食を毎日食べる子の割合も小6で83.1%、中3で78.4%と、この10年でじわじわと下がり続けています(10年前は小87.3%、中83.3%)。
夜ふかしの側から見ると、この「就寝だけが乱れる」構造は、動画視聴の時間帯と無関係ではありません。平日3時間の視聴は、物理的に夜に食い込むからです。夏休み明けのリズムの戻し方は子どものリズム記事に、受験学年の夜の設計は受験生のリベンジ夜更かしにまとめてあります。
家庭でどう受け止めるか — 取り上げる前にできること
文部科学省はこの結果を受けた取組として、こども家庭庁などと連携した利用時間の「親子のルールづくり」の推奨を挙げています。一方的な禁止ではなく、親子で決めるという方向性です。
データの構図を踏まえるなら、家庭で効くのは次の順番だと考えます。
①総量より先に、時間帯を決める。「1日2時間まで」は測るのも守らせるのも難しいルールですが、「寝る30分前からは見ない」「動画は夕食まで」のような時間帯のルールは判定が明確です。睡眠への食い込みを先に止められる点でも合理的です。寝る前のスマホ対策がそのまま使えます。
②「見る」を減らした分を「使う」に振り替える。調査が示す通り、端末を持たない層が最上位ではありません。調べ物、作文、スライドづくり、プログラミング——能動的な使い方はむしろ学力と正の相関があります。禁止一辺倒より、「受動→能動」への振り替えのほうがデータには忠実です。
③ルールは親子で決めて、大人も守る。これは調査の外側の話ですが、リビングで大人がスクロールしながら「動画はやめなさい」は通りません。夜の環境を家全体で設計する話は子育て中の夜更かし記事で書いた通りです。
出典: 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査の報告書・調査結果資料」(2026年8月公表・速報版)。本文の数値は同報告書【質問調査】および実施概況資料から引用した。