ベッドで少しだけスマホを見るつもりが、目を開けたら朝の5時。天井の照明は煌々とついたまま、スマホは顔の横に落ちている。こういう寝落ちが週に何度もある、という人は少なくありません。
結論から言うと、電気をつけたまま眠ることは、厚生労働省の睡眠ガイドでもはっきり「良眠の妨げになりうる」と書かれている習慣です。ただし、一晩で体を壊すような話ではありません。この記事では、分かっていることと分かっていないことを分けたうえで、寝落ちしても明かりが消える仕組みの作り方を紹介します。
厚労省のガイドが挙げている「気づかない妨げ」
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、睡眠を妨げうる寝室環境の例として「テレビやラジオをつけながら寝る」「電気をつけたまま寝る」を挙げ、気づかないうちに良眠の妨げになっている可能性があるため、改善するよう勧めています。
同じガイドの環境づくりの章には、寝ている間は低い照度の光でも中途覚醒の時間が増え、睡眠の効率が下がることが報告されているとも書かれています。寝落ちした本人は「ぐっすり眠れた」と感じていても、夜中に浅く目覚めている時間が増えているかもしれません。
一晩、明かりの下で眠った実験
2022年に米ノースウェスタン大学の研究チームが発表した実験(Masonら、PNAS)では、健康な若い成人20人を2つのグループに分け、一方は2晩とも暗い部屋(3ルクス未満)で、もう一方は2晩目だけ100ルクスの明かりの下で眠ってもらいました。
- 明かりの下で眠ったグループは、睡眠中の心拍数が上がり、心拍のゆらぎ(心拍変動)が小さくなりました。眠っている間も体が緊張側に傾いていたと解釈されています
- 翌朝の検査では、インスリンの効きが悪くなる方向(インスリン抵抗性の上昇)の変化が見られました
参加者は20人と少なく、見ているのは一晩の短期的な変化です。研究者自身も、長く続けた場合の影響はさらに調べる必要があるとしています。それでも、本人が眠っているつもりでも、明かりは体に届いていることを示した結果です。
4万人超の女性を追った調査
2019年に米国立衛生研究所(NIH)傘下の研究所のチームが発表した調査(Parkら、JAMA Internal Medicine)では、35〜74歳の女性43,722人に寝るときの明るさを尋ね、約5年後の体重の変化を追いました。
- 部屋の照明やテレビをつけたまま寝ていた人は、5kg以上体重が増えた人の割合が17%高いという関連が見られました
- 一方で、小さな常夜灯をつけて寝ていた人には、体重増加との関連は見られませんでした
- 部屋の外から入る明かりは、関連がより弱くなりました
これはアンケートをもとにした観察研究で、「明かりが原因で太った」と証明したものではありません。明かりをつけて寝る人の生活習慣が、ほかの点でも違っている可能性は残ります。対象も女性だけです。ただ、問題になるのは「部屋全体の明るさ」で、小さな常夜灯とは分けて考えてよさそうだ、という点は覚えておく価値があります。
真っ暗が苦手なら、明かりを「小さく、低く、目に入らない位置」に
真っ暗だと不安で眠れない人が、無理に完全な暗闇にする必要はありません。睡眠ガイドも、こどもについて、照明をつける場合でも照度を落とすよう勧めています。大人も考え方は同じです。
- 天井の照明ではなく、足元灯や小さな常夜灯にする
- 光源が寝たときの視界に直接入らない位置(ベッドの足側、床に近い高さ)に置く
- 暖色の明かりを選び、明るさを調整できるなら一番暗くする
寝落ちを前提に「勝手に消える」仕組みを作る
毎日寝落ちしてしまう人に「寝る前に電気を消しましょう」と言っても意味がありません。寝落ちは、消す前に眠ってしまうから寝落ちなのです。発想を変えて、寝落ちしても明かりが消える仕組みを先に作ります。
1. 照明のリモコンの「切タイマー」を使う
LEDシーリングライトのリモコンには、30分後や60分後に消える「切タイマー」「おやすみタイマー」が付いている機種があります。ベッドに入るときにボタンを1回押す習慣にすれば、寝落ちしても1時間後には消えます。付いているかどうかは、リモコンのボタン表示か取扱説明書で確認してください。
2. スマート電球・スマートプラグで「毎晩◯時に消灯」を設定する
リモコンにタイマーがない場合は、スマート電球や、照明・スタンドをつなぐスマートプラグで、毎晩決まった時刻に消える設定にできます。「1時になったら必ず消える」と決めておけば、寝落ちした夜でも明かりがつきっぱなしになるのは最大で1時までです。
3. ベッドに入ったら「暗い明かり」に切り替える
寝室の照明を、ベッドに入った時点で一段暗いモードやスタンドだけに切り替えます。寝落ちしたとしても、部屋全体が明るい状態よりはずっと暗い状態で眠ることになります。
4. テレビは本体のオフタイマーで
テレビをつけたまま眠る習慣がある場合は、テレビ本体のオフタイマー(スリープタイマー)を使います。多くの機種に付いている機能で、リモコンの設定メニューから時間を選べます。
5. スマホと動画はスリープタイマーで止める
寝落ちの原因が動画なら、アプリや端末のスリープタイマーで再生を止められます。設定方法は寝落ちした動画を自動で止める方法にまとめました。スマホの画面の明るさそのものについては寝る前のスマホ対策もあわせてどうぞ。
毎日寝落ちするのは、眠気が強すぎるサインかもしれない
明かりを消す前に眠ってしまうほどの眠気が毎晩続くなら、そもそも睡眠時間が足りていない可能性があります。睡眠ガイドは、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保するよう勧めています。
ソファやこたつで寝落ちして、夜中に目が覚めてベッドへ移動し、そこから眠れなくなる。こうした寝落ちの繰り返しは、夜の眠りを細切れにします。眠いと感じた時点で寝床へ移るほうが、結果として長く眠れます。布団に入っても眠れないときの考え方はこちらの記事で紹介しています。
よくある質問
一晩電気をつけたまま寝てしまいました。体に悪いですか?
常夜灯(豆電球)もつけないほうがいいですか?
アイマスクをすれば、電気がついていても大丈夫ですか?
照明のリモコンにタイマーがありません。
参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」/Mason IC, et al. Light exposure during sleep impairs cardiometabolic function. PNAS 2022/Park YM, et al. Association of Exposure to Artificial Light at Night While Sleeping With Risk of Obesity in Women. JAMA Internal Medicine 2019(NIHの発表)。資料確認:2026年10月10日。一般的な健康情報であり、個別の診断や治療を目的とするものではありません。