昼を過ぎたあたりから、文章が頭に入らない。同じ行を三度読む。メールの返信を書き出しては消す。夕方になるとなぜか少し戻ってくる——。
この時間帯の失速は、意志の弱さでも夏バテという曖昧な何かでもありません。もともと誰にでもある谷に、夏だけの上乗せが重なった結果です。分けて考えると、打つ手がはっきりします。
午後2〜4時の眠気は、昼食のせいではない
「昼にご飯を食べたから眠い」という説明はよく聞きますが、これは主因ではありません。昼食を抜いた日でも、この時間帯の眠気はやってきます。
人の覚醒度は一日を通してなだらかに上下しており、午後の早い時間に一度落ち込むポイントがあります。ポスト・ランチ・ディップと呼ばれる谷で、名前に昼食が入っているせいで誤解されがちですが、体内時計のリズムに元から組み込まれた落ち込みです。
つまりこの谷そのものは異常ではないし、根性でなくすものでもありません。多くの文化圏に昼寝の習慣があるのは、この谷が普遍的だからです。
問題は、夏にこの谷が「明らかに深い」と感じられること。ここには理由があります。
夏に谷が深くなる、3つの上乗せ
① 前の夜の睡眠の質が落ちている
いちばん大きいのがこれです。寝つきの悪さ、夜中の目覚め、冷房のつけ消しによる温度の乱高下。時間としては同じ7時間眠っていても、中身が薄ければ翌日の午後に効いてきます。午後の不調は、前夜の請求書という側面があります。
② 軽い脱水
夏は自覚がないまま水分が減ります。そして水分不足は、体調より先に注意力や気分に出ることが知られています。「喉が渇いた」と感じた時点ですでに遅れているので、渇く前に飲むかどうかで午後の頭の回り方が変わります。
③ 屋内が暗い
意外に見落とされるのがこれです。暑さを避けて一日中屋内にいると、浴びる光の量が大幅に減ります。日中にしっかり光を浴びていないと覚醒度が上がりきらず、夜のリズムも締まりません。冬より夏のほうが屋内にこもるという人は少なくありません。
午後を立て直す4つの手
① 20分以内の仮眠を、15時までに
谷が消せない以上、いちばん効率がいいのは正面から短く寝てしまうことです。条件は2つ、20分以内と15時まで。これを超えると深い眠りに入って起きたあとが重くなり、夜の眠気も削れます。机で目を閉じるだけでも効きます。
② 渇く前に水を飲む
午前中から手元に飲み物を置き、こまめに口をつける。冷たいものを一気に流し込むより、少しずつのほうが体には楽です。カフェイン飲料だけで水分を取ろうとしないこと。
③ 一度、外の明るさに当たる
昼休みに5分でも外に出る、それが無理なら窓際に移動する。屋内の照明と屋外では明るさの桁が違います。暑い日は日陰で十分です。午後の覚醒にも、その日の夜の寝つきにも効きます。
④ 重い判断を、谷に置かない
スケジュールの側を動かす手です。集中力が要る作業や、取り返しのつかない判断を午後の谷に置かない。谷には定型作業や打ち合わせを寄せ、頭を使う仕事は午前か夕方に移す。コンディションに合わせて仕事の配置を変えるほうが、根性で押し切るより安上がりです。
効かないのに続けがちなこと
- 午後の追いカフェイン — カフェインは体から抜けるのに時間がかかります。夕方に飲んだ分がその夜の寝つきを削り、翌日の午後をさらに重くする。谷を借金で埋めている形になります
- 甘いものの補給 — 一時的に持ち直した感覚はありますが、谷の原因は血糖ではないので長続きしません
- 「気合いで乗り切る」 — 乗り切れた日は、たいてい前夜がまともだった日です
根を断つなら、前夜側
午後の対処はあくまで対症療法です。上乗せ分の大半は前の夜に作られているので、根本的に軽くしたいなら手を入れる場所は夜になります。
そして夜の睡眠を削っている原因は人によって違います。暑さなのか、寝る直前のスマホなのか、就寝時刻の曖昧さなのか、切り上げられなさなのか。どこが主因かによって、打つべき手はまったく変わります。