「何度に設定するか」ではなく、布団の中が33℃前後になっているかで考えるほうが実際的です。
- 東京の平年値では、最低気温が20℃を割るのが9月18日。ここから冷房は寝入りの1〜2時間で足りることが多くなります
- 15℃を割るのは10月16日。ここから先は室温ではなく掛ける寝具の側で調整する季節です
- 「秋は寒暖差が激しい」は一日の中の話としては成り立ちません。変わるのは下がっていく速さで、8月の約3.6倍です
9月も半ばを過ぎて、毎晩のように迷う問いがあります。寝るときのエアコンは、いつまでつければいいのか。
検索してみると、出てくるのはほとんどが「何度に設定するか」の話です。26℃前後がよい、外気との差は5℃以内に、といった具合で、肝心の「いつまで」には誰も日付で答えていません。
そこでこの記事では、気象庁が公開している東京の平年値(1991〜2020年の30年平均)を9月から11月まで自分で集計して、日付で答えを出します。そのうえで、厚生労働省の睡眠指針の原文にあたって、そもそも何を基準にすればいいのかを確認しました。
「何度に設定するか」は、実は答えの出ない問い
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」の原文(41ページ)に、こう書かれています。
3つの数字が出てきます。順番に読むと、話の筋が見えてきます。
- 何も掛けずに寝るなら、29〜34℃が快適。人の体はそれだけ高い温度を求めています
- 寝具と寝衣を使う前提なら、部屋は13〜29℃でよい。掛けるものがあるぶん、低温側に大きく広がります
- そして本当の目安は布団の中の、体のすぐそばが33℃前後であること
つまり室温は目的ではなく手段です。同じ26℃の部屋でも、タオルケット1枚と羽毛布団とでは布団の中の温度がまるで違う。「寝室は何度が正解か」という問いに一つの答えが出ないのは、当然のことでした。
眠りが体温と結びついている理屈は、入浴と深部体温の記事で書いたとおりです。体の内部の温度が下がる過程で眠りは深くなり、その熱は手足から逃げていきます。布団の中が33℃前後というのは、熱が逃げすぎず、こもりすぎないちょうどの範囲、という意味です。
東京の平年値で、「いつまで」に日付で答える
では、外の気温はいつ、どこまで下がるのか。気象庁の東京の平年値を9月から11月まで通して並べ、しきい値を割る日を拾いました。
| 平年の日付 | 最低気温 | 最高気温 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 9月18日 | 19.8℃ | 27.0℃ | 最低気温が20℃を割る(前日は20.0℃) |
| 10月16日 | 14.8℃ | 21.9℃ | 最低気温が15℃を割る |
| 10月25日 | 12.9℃ | 20.4℃ | 指針が挙げる許容室温の下限13℃を外気が割る |
| 11月10日 | 9.9℃ | 17.8℃ | 最低気温が10℃を割る |
いちばん手前の節目が、9月18日です。前日の9月17日の最低気温の平年値はちょうど20.0℃で、翌18日に19.8℃となって20℃を割ります。真夏のピーク(8月3日の23.9℃)からは4.1℃下がった水準です。
外が20℃を割る夜は、部屋を閉め切っていても室温がそこまで上がりません。冷房が必要なのは、日中に暖まった部屋の熱を抜く寝入りの1〜2時間に縮みます。一晩中動かす段階はもう終わっている、というのが平年値から見た9月下旬です。
次の節目が10月16日の15℃割れ。ここから先、冷房の出番はまずありません。代わりに効いてくるのが寝具の側です。指針の言い方を借りれば、室温を下げる道具から、布団の中を33℃に保つ道具へ、調整の主役が移ります。着る毛布や電気毛布を出すかどうかを考えるのは、この時期です。
そして10月25日には、外の最低気温が12.9℃となり、指針が挙げる許容室温の下限13℃を下回ります。もちろん室内は外より暖かいので、この日から暖房が要るという意味ではありません。ただし明け方の室温は外気に近づいていくため、寝具だけで受けきれるかを意識し始める境目にはなります。
「急に涼しくなった」の正体は、下がる速さ
9月に入ると毎年「急に涼しくなった」と感じます。これは気分の問題ではなく、平年値にはっきり出ています。
- 8月(3日→31日): 最低気温 23.9℃ → 22.6℃。29日で1.3℃、1日あたり約0.05℃
- 9月(1日→30日): 22.5℃ → 17.6℃。29日で4.9℃、1日あたり約0.17℃
- 10月(1日→31日): 17.4℃ → 11.7℃。30日で5.7℃、1日あたり約0.19℃
8月はほとんど下がりません。9月に入ったとたん、下がる速さが約3.6倍になります。真夏のあいだ2週間おきに寝具を見直す必要がなかったのは、実際に環境が動いていなかったからで、9月以降は1か月放っておくと5℃以上ずれる計算になります。今日9月18日の19.8℃に対し、1か月後の10月18日は14.4℃です。
「秋は寒暖差が激しい」は、一日の中の話ではない
ついでに、よく聞く言い方をひとつ確かめました。一日の最高気温と最低気温の差を計算してみると、こうなります。
- 8月3日: 31.8 − 23.9 = 7.9℃
- 9月18日: 27.0 − 19.8 = 7.2℃
- 10月16日: 21.9 − 14.8 = 7.1℃
- 11月10日: 17.8 − 9.9 = 7.9℃
ほぼ一定です。むしろ9月から10月にかけては真夏よりわずかに小さい。「秋は一日の中の寒暖差が激しい」という説明は、平年値では支持されません。
私たちが秋に感じている寒暖差の正体は、前の章で見た日を追って下がっていく速さのほうです。一日の中の振れ幅は変わらないのに、その帯そのものが毎日ずるずると下へ動いていく。昨日ちょうどよかった寝具が今日は少し寒い、という感覚はここから来ます。秋の体調の崩れ方については秋バテの記事でも触れました。
明け方に目が覚めるのは、二つの底が重なるから
秋の睡眠でいちばん多い不調は、寝つけないことではなく明け方に目が覚めることです。理由は単純で、二つの最低点が同じ時間帯に来るからです。
- 体の内部の温度は24時間のリズムを持っていて、最も低くなるのは明け方です
- 外の気温も、最も低くなるのは日の出前後です
真夏は、この二つが重なっても外が27℃や28℃あるので問題になりませんでした。秋は外が15℃や10℃まで落ちるため、体が最も冷えている時間に、部屋も最も冷えるという状態になります。寝入りの快適さに合わせて薄い寝具にしていると、明け方にちょうど足りなくなる。
対策はあっけないほど単純で、寝入りの快適さではなく明け方に合わせて掛けるものを決め、暑ければ寝入りだけ足を出す。掛けるものは足せますが、寝ている間に取りに行くことはできません。
タイマーで切るのが損なのは、夏も秋も同じ
真夏について、当サイトでは朝までつけっぱなしが現実的な最適解だと書きました。タイマーで切れた後に室温が上がり、明け方には30℃を超えることがあるためです。
秋も、実は同じ構造の失敗が起きます。違うのは向きだけで、切れた後に冷えるほうの事故になります。どちらの季節も、問題が起きるのは決まって「切れた後の時間帯」です。
秋にやるなら、切るのではなく設定温度を上げる方向で運転を続けるか、はじめから冷房に頼らず寝具で受けるかの二択です。寝入りの1〜2時間だけ動かして自然に止まる運用であれば、それがいちばん素直です。
温度以外に、指針が挙げている数字
同じ41ページには、温度以外の環境についても数字が出ています。ついでに拾っておきます。
- 湿度 — 同じ温度でも、湿度が高くなると覚醒が増え、深い眠りが減ることが示されています
- 音 — 夜間の騒音は45〜55デシベル程度でも、不眠や夜中の目覚めが増えます
- 静かすぎる環境 — 暗く無音で刺激が極端に少ない条件では、逆に目が冴えて、小さな物音が気になったり不安が高まることが報告されています
最後の一つは意外に思えますが、寝室を完璧に無音にしようとして眠れなくなる人がいるのは、この裏づけがあります。ほどほどでよいということです。
まとめ — 今日から11月までの切り替え表
数字はいずれも東京の平年値です。お住まいの地域や、その年の天候によって前後します。それでも「9月中旬に20℃、10月中旬に15℃」という目安を持っておくだけで、毎晩の判断はだいぶ楽になります。
環境を整えても眠りが浅いままなら、原因は室温ではなく行動の側にあるかもしれません。就寝時刻のばらつき、寝る直前のスマホ、夕方以降のカフェイン——このあたりは眠気がたまる仕組みの記事から確認できます。冬に向けて眠気とだるさが増えていく理由は、光と体内時計の記事にまとめました。
よくある質問
寝るときのエアコンは何度に設定するのが正解ですか?
秋になったら冷房はいつやめればいいですか?
秋の夜中や明け方に目が覚めるのはなぜですか?
「秋は一日の寒暖差が激しい」というのは本当ですか?
タイマーで切るのはだめですか?
参考
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」41ページ(寝室の温度・湿度・騒音)
- 気象庁「過去の気象データ検索」東京の日ごとの平年値(統計期間1991〜2020年・30年)
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(夏の寝室の室温上昇と睡眠効率)