寒くなってくると、窓もドアも閉め切って眠りたくなります。けれど、朝起きたときに部屋の空気がこもっている、頭が重い、と感じたことはないでしょうか。
早稲田大学などの研究チームは、寝室の二酸化炭素(CO2)濃度が1,000ppmに達すると、眠りの質が下がり始めると報告しています。この記事では、その研究の中身を確かめたうえで、閉め切った寝室のCO2が一晩でどこまで上がるのかを試算し、寒くならない換気の工夫をまとめます。
結論 — 2人で寝る6畳は、24時間換気が動いていても朝には約2,200ppm
早稲田大学などのチームが17本の研究を見直した結果、寝室のCO2濃度が1,000ppmに達すると、眠っている時間の割合や深い眠りの割合が下がることが確認されました。チームは余裕をみて、寝室は800ppm以下を目安にするよう提案しています。
ところが、今の住宅の換気の基準(1時間に部屋の空気の半分が入れ替わる「0.5回/h」)のままだと、6畳に2人で寝た場合、編集部の試算では朝までに約2,200ppmまで上がります。800ppm以下に保つには、今の基準の2倍以上の換気が必要です。
早稲田大学などの研究でわかったこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文 | Akimoto M ほか "New research on bedroom ventilation and sleep quality suggests that building standards should be revisited (ASHRAE 1837-RP)"(Science and Technology for the Built Environment、2025年7月オンライン公開) |
| 何をしたか | 2020年1月〜2024年8月に発表された、寝室の換気と睡眠の質を同時に測った17本の研究を整理・分析 |
| わかったこと | 睡眠の質がはっきり下がった最も低いCO2濃度は約1,000ppm。比べる基準として使われた条件のうち最も高い濃度は850ppm |
| 提案 | センサーの誤差(±50ppmほど)も考え、寝室は800ppm以下をひとまずの目安に。そのためには大人1人あたり毎秒約8リットルの外気が必要 |
毎秒8リットルは、1時間に約29立方メートルです。早稲田大学の発表では、広さ10平方メートル・天井高2.5メートルの寝室なら、1人で寝るときは1時間に1回、2人なら30分に1回、部屋全体の空気が入れ替わる量にあたると説明しています。
なお、これは過去の研究をまとめたもので、研究ごとに人数や測り方が違います。チームも、1,000ppm未満の比較データはまだ足りず、研究の積み重ねが必要だとしています。
閉め切った寝室のCO2は一晩でどこまで上がるか(試算)
研究の数字を使って、6畳(約10平方メートル・天井高2.4メートル、約24立方メートル)の寝室で計算しました。寝る前に窓を開けて外と同じ420ppmにしてから閉め切った場合です。
| 換気の量 | 人数 | 1時間後 | 2時間後 | 4時間後 | 7時間後 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.5回/h(今の基準どおり) | 1人 | 約780ppm | 約1,000ppm | 約1,210ppm | 約1,310ppm |
| 0.5回/h(今の基準どおり) | 2人 | 約1,140ppm | 約1,580ppm | 約2,000ppm | 約2,200ppm |
| 0.25回/h(基準の半分) | 2人 | 約1,230ppm | 約1,860ppm | 約2,740ppm | 約3,450ppm |
| 1.0回/h(基準の2倍) | 1人 | 約710ppm | 約820ppm | 約870ppm | 約880ppm |
| 1.0回/h(基準の2倍) | 2人 | 約1,000ppm | 約1,210ppm | 約1,320ppm | 約1,340ppm |
計算の前提:眠っている大人1人が出すCO2を1時間に11リットル(早稲田大学の発表で成人の睡眠中として使われた値)、外の空気を420ppmとし、部屋の空気はむらなく混ざるものとしました。実際の家は、すき間風やドアの開け閉め、部屋の形で大きく変わります。あくまで目安として見てください。
表から読み取れることは3つあります。
- 寝る前の換気は数時間で元に戻る:窓を開けて420ppmにしても、2人なら1時間で1,000ppmを超えます。寝る前の換気だけでは朝までもちません
- 人数で大きく変わる:同じ部屋・同じ換気でも、2人だと上がり方はほぼ倍です。家族で同じ部屋に寝るなら、さらに高くなります
- 換気を止めると一気に上がる:寒さや音が気になって24時間換気を止めたり、給気口を閉じたりすると、2人で3,000ppmを超えることもありえます
「0.5回/h」はどこから来た数字か
国土交通省によると、建築基準法ではシックハウス対策として、原則すべての建築物に機械換気設備の設置が義務づけられています。住宅の場合は換気回数0.5回/h以上の設備、いわゆる24時間換気システムが必要です。この規定は2003年7月に施行されたため、それより前に建てられた家には、24時間換気がないこともあります。
つまり0.5回/hは、建材から出る化学物質への対策として決められた数字で、眠りの質を基準にしたものではありません。早稲田大学のチームが「住宅の基準を見直すべき」と提案しているのは、このためです。
寒くならずに寝室の換気を増やす方法
- 24時間換気を止めない・給気口を開ける:まずは基準どおりの0.5回/hを確保します。冬に給気口を閉じていないか、フィルターがほこりで詰まっていないかを確かめてください
- 寝室のドアを少し開けておく:廊下やほかの部屋とつながると、空気の量が増えるぶん、CO2の上がり方がゆるやかになります
- 窓は数センチだけ開けて、冷えは寝具で防ぐ:大きく開けると寒くなるので、すき間程度にとどめます。冷えは掛け物を1枚足す、首元をふさぐなど寝具側で補います(明け方に寒くて目が覚めるときの対策)
- 大人数で1部屋に寝るなら分ける・換気を強める:2人以上で寝る部屋ほど換気が足りなくなります。換気扇に「強」運転があれば寝るときに使う、という手もあります
- CO2モニターで実際の数字を見る:家ごとに条件が違うので、一度測ると自分の寝室の状況がわかります。朝の数字が1,000ppmを大きく超えているなら、換気を見直すきっかけになります
よくある質問
冬に寝るとき、換気は必要ですか?
寝る前に窓を開けて換気すれば十分ですか?
24時間換気は冬に止めてもいいですか?
CO2濃度が高いと、体に害がありますか?
参考:早稲田大学「寝室の換気量、現行の2倍が望ましい可能性」(2025年9月9日)/Akimoto M, et al. "New research on bedroom ventilation and sleep quality suggests that building standards should be revisited (ASHRAE 1837-RP)." Science and Technology for the Built Environment. 2025/国土交通省「住宅等における換気等に関する情報提供について」。CO2濃度の推移は、上記の値(睡眠中の成人のCO2 11L/h・外気420ppm)をもとに編集部が試算したもので、実測値ではありません。いずれも2026年10月25日に確認。